基本的に非公開練習で行われるバルサキャンプ。しかし、毎週金曜日の午前中のみ、一般公開される為、この日はようやく、TORAの練習ぶりを見る事が出来ました。10〜12時の午前練習は、FCバルセロナの総合練習場、「JOAN GAMPERスポーツタウン」にて実行されました。普段は、バルサのカンテラ(下部組織)の練習や公式戦、そして、バルサのトップチームのトレーニングが行われる場所で、天然芝5面、人工芝3面、7人制コート1面の広大な敷地は、いつみても壮観です。
まずはバルサの定番ウォーミングアップメニューのRONDO(鳥かご)を行った後、1対1の仕掛けの対人練習がひたすら行われました。その後、3対2の攻防からのシュート練習、続いて2対1の攻守の切り替えを意識した数的有利の状況からフィニッシュに持って行くまでの対人練習がじっくりと時間を割かれて行われました。
この日は連日の暑さから一転、パラパラと天気雨が降り注ぎ、24度前後と非常に過ごしやすいコンディションの中で行われました。
最後はおよそ3分の1の、普段は7人制用に使われる広さのコートで、9対9のミニゲームが行われました。1997年生まれチーム対1998年生まれチームの対決。普段は10〜12人のグループでそれぞれ別々に練習している両グループが、このように、毎日対決する形です。
TORAは1−4−1−2−1のアンカーの位置に入り、25分ハーフの50分間、フル出場しました。試合は相手チームの巨漢(ドログバ〈仮称〉)が後方からの浮き球に抜け出し、“そのタイミングで打つか!”というやや遠目からの豪快なロングシュートが決まり、いきなり97チームがリードします。
するとその直後、TORAから絶妙な足の長い糸を引くようなスルーパスが右前線のオープンスペースに通り、これに反応したリキがシュートするも、ボールは枠を僅かに外れます。が、劣勢を吹っ飛ばすような一気に局面を変えたTORAのプレーに、詰めかけた周囲の父兄達は、「おぉ〜!」湧いていました。
その後、97チームが押し込む展開が続く中、アンカーのTORAは相手の縦に入るボールを狙い澄ましたように俊敏にパスカットするプレーを何度か連発し、「Muy bien ! TORA!(いいぞ!TORA !!!)」と仲間や監督から声が掛かります。バルセロナに来る前に肉離れをやってしまい、「守備の時の玉際はまだ70%ぐらい」と語っていた本人ですが、ゴリゴリのコンタクトプレーを上手く避けながらも、守備面でも良い仕事をしています。さながら、アルゼンチン代表キャプテン、マスチェラーノばりです!一方、自分達のボールになると、中央に構えるTORAから、長短のパスがポンポンとリズム良く繰り出され、チームにリズムを与えます。さながら、イタリア代表のピルロのような指揮者ぶりです!また、時にはタイミング良く前線に飛び出し、攻撃に絡んで行きます。さながら、コートジボワール代表のヤヤ・トゥーレのように!
一方、97年チームにも何人かくせ者がいて、特に金髪のさらさらヘアーのアレックス〈仮称〉がキーマンとして、97チームの攻撃を牽引します。それほど大柄では無いものの、体格的にはTORAよりもがっしりしていて、時折見せるマッチアップでは、ややTORAが分の悪さを露呈させてしまいます。
97年チームの決定力の無さにやや助けられ、1点差を保っていた98は、TORAから右サイドへ大きく展開されたボールを中央に折り返し、それを味方のネイマール〈仮称〉がゴール隅に叩き込み、遂に98が同点に追いつきます!特筆すべきは、右から折り返された中央へのクロスに、何とTORAも絡もうとしていた点です。後方から右に展開したキッカーだったTORAが、一気に前線に走り込み、折り返しのクロスに追いつこうとしていた訳です。TORA、機動力もなかなかのものです。そう、ドイツ代表のトーマス・ミュラーのように!ちなみにこのネイマール君は完全に髪型はネイマールを意識した様子が伺えますが、足元の技術にはやや難あり。それでも、同点ゴールを決めるという重要な役割を果たしました。
同点で折り返した後半、前半はやや97が学年通りの攻勢を見せていましたが、98がその対応に慣れて来たのか、ほぼ互角の戦いです。98の中で特に目立っていたのがリキ。右サイドをスピードを生かしてガンガン縦に突破する姿は、見ていて気持ちがいい!個で相手を剥がして局面を打開する事が出来るリキは、98のキーマンの一人です。
一方、98のもう一人のキーマンがTORA。ここ数日のトレーニングの中ですっかり信頼を勝ち得ているようで、中央に位置するTORAに次々とボールが集まります。的確にスペースを見つけて素早くそこへ移動し、パスを受け、そしてまた素早く叩く。中盤での彼の存在感は光ります。また、的確にフリーの選手を見つけ、そこにしっかりとパスを通す技術もしっかりしており、実戦の中で機能するタイプという事が良く分かります。時折強引な縦パスを狙って相手に奪われるシーンが何度かあったものの、それらを吹き飛ばす程、この日のTORAは活躍していました。
そんなTORAが、前線で良い状態で抜け出た味方に絶妙な縦の浮き球を送り込むと、オフサイドすれすれで抜け出したカルロス〈仮称〉が見事なトラップで自分のものにすると、そのまま飛び出して来るGKの脇をすり抜けるシュートを放ち、遂に98が逆転に成功します。
中央のTORAがボールを持つと、的確に良いボールが来ると分かっている味方は、TORAを信じてスペースに走り込んだり、「TORA!TORA!」と言って、パスを呼び込む声を掛けて来ます。右利きのTORAは、右足でボールを持ちながら視野を広く取りたい為か、右サイドへボールを運ぶのがより得意なようですが、時にはもっと左サイドも同じようにワイドな視線で見たいところ。何度か、よりよい選択肢は左サイドにあったものの、それが見えていないようなプレーぶりが見えました。
が、それでも、やはりこの日はTORAの日と言っても良かったかもしれません。この日、再三再四見せていたい2列目、3列目からの飛び出しが、ようやく実を結ぶ事になります。
右サイドでのパスワークの展開から追い越して裏でボールをもらったTORA(この時点ではオフサイドでしたが、ラッキーにも見過ごしてもらいました!笑)は、そのままゴールエリア付近までドリブルで侵入し、中央へ体を向きながら、右足でトゥキック気味にシュートを放つと、中央へパスと読んでいたGKはやや反応がずれ、ゴールイン!TORAのゴールによって98チームは待望の追加点を奪う事に成功します!
試合はそのまま、3−1でTORA擁する、いや、TORA率いる98年組が、97年組に勝利しました!より屈強でフィジカルが上の相手に対し、98年組が皆で手にした見事な勝利!そして、3点いずれにも絡んだTORAは、明らかにこの日のMAN OF THE MATCHと言えるでしょう!
「好きな選手はイニエスタやチャビ」と語るTORAでしたが、彼らのプレースタイルには無いような、相手の攻撃を寸断する守備力や広範囲に分かって動き回り、いつもの間にか前線に顔を出す機動力も併せ持つTORA。俊敏性もあり、将来が非常に楽しみな若者である事が確認出来ました。
午前中の練習が終わり、雨と汗にまみれたTORAは、爽やかな表情を見せてくれました!
キャンプは、まだまだ続きます!
隣のグラウンドでは、バルサのカンテラのユースチームがトレーニングに励んでいました。