この日は2度目のエスパニョール・カンテラでのトレーニング。初日の練習では、「日本では体感出来ないレベル」と感想を語っていたPAK。しかし、春からは某Jクラブ・ジュニアユースチームの一員としてプレーする訳で、誇りと意地を持って、残り1週間、取り組んでもらいたいと思います。
この日のトレーニングでは、ロンド(鳥かご)から始まり、ミニゲーム、一対一、更には4分の1面を使っての再びミニゲームと言う練習メニューでした。特に、最後のミニゲームでは、一対一に勝ったものだけが参加出来るキーパーを入れて6vs6のゲーム形式で、一対一に勝たなければ、いつまで経っても試合に参加する事が出来ません。しかも、面白い事に、その一対一は、その試合のグラウンドの中で、同時に行うのです。つまり、試合をしている選手達と一対一をしている選手達が同じフィールドで交差する形になり、混沌としたカオス状態の中で、周囲の状況を見ながらプレーしなければ行けない設定がなされていました。
PAK「相手のフィジカルに全然かなわない。一対一で勝てない。」と練習後に語ったPAK。小6にして165cmと恵まれた体を持ちながら、このセリフは情けない!
PAK「日本では、ここまでがっつり激しく来ないし、何となくかわせていたけど、ここでは通用しない。それと、日本ではこれまで、そこまで一対一の技術を求められて来なかったので、ここで技術の無さがはっきりと分かった。」
“一対一、そんなにやって来なかったの!?”
PAK「はい。今度入るJのチームも、パスサッカーを目指しているんで。」
ちょっと待った!と言いたい。最近、パスサッカーって言葉を良く聞く。それは、バルサの流れるようなパスワークの影響で、そういうサッカーを志向しようと言うチームが増えて来ていると言う事だと思うが、どうも聞いていると、パスに囚われすぎて、事の本質を見誤っているように感じてならない。
確かに、バルサのように、2人、3人、4人が連動して、ワンタッチでポンポンと崩して行く様は美しい。観ていて楽しいし、魅力的なフットボールだと思う。
しかし、バルサは本当にパスだけなのだろうか!?人間よりも速く走るパスを巧みに使えば、もちろん、相手ディフェンスを攻略し易くなる。でも、味方が良いポジションにいないシチュエーション、相手ゴール前でディフェンダーと一対一になったシチュエーションで、無理やりパスを探すだろうか!?目の前の相手を抜き去れば、後はGKしかいないと言う単純明快なシチュエーションでは、やはり、果敢に勝負してゴールを狙うべきだろう。華麗なるパスワークもフットボールの魅力の一つなら、一対一の勝負もまた、フットボールの醍醐味の一つだ。
だから、「俺たちはパスサッカーを目指そう。一対一の練習は二の次で良い。」のでは無く、華麗なるパスワークも、果敢な一対一の勝負も、どちらも追求するべきだ。
ディフェンダーからすれば、まず第一にパスを探す選手よりも、果敢に仕掛けて来る選手の方が嫌なものだ。パスワークで攻めてくるチームに対し、組織でスペースを消して守れば、相手は横パスで“回させられている”状態になり、手詰まりになる。そんな時こそ、個人の強引な仕掛けが、突破口を生む事だってある。
要は、その状況、その瞬間にパスなのか、自分で仕掛けるのか、どちらも武器として持っていて、的確な判断を瞬時にこなし、最善のプレーを繰り出す事が重要だ。
ディフェンダーにとっても、パスなのか、自分で来るのか、迷う方がやり辛い。
だから、極端にパスを志向したり、もしくは逆に個人技へ傾倒するのは、ナンセンスだと思う。
両方重要。チームとしてのパスワークと、個人の技術、双方鍛える事が肝要。そして、それを適材適所で繰り出す判断力を養うことが、何よりも重要だ。
それだけに、天下のJのクラブですら、“パスサッカー”を標榜するあまり、フットボールの本質からずれていると言うのは、とても心配だ。