キャンプもあっと言う間に最終日を迎えました。
この日は、午前中、トレーニング、そして、午後は“Mundialito”の決勝トーナメントが行われました。
午前中の練習では、5つのグループに分かれ、5種類のキックゲームにチャレンジしました。
1つは、フットボール・パター、1つは、ノーバウンドシュート、1つは、コーナーからのコントロールキック、1つは、的当てシュート、そして、もう1つは、アプローチショットです。
ここでは、様々な質のキックや、精度、そして、キック力等が求められました。そこでは、キック力を活かしたSHUNがノーバウンドシュートで高得点の16点をマークすれば(最高得点は20点)、ITSUKIがアプローチショットで14点(最高20点)をマークし、見事なコントロールショットを見せてくれました。また、SHOKIが利き足の左のアウトサイドで蹴り込んだシュート回転のキックによって、見事にコーナーからのコントロールキックで小さいゴールに蹴り込む事に成功しました。RYUGENは、なかなかのキック力の持ち主で、ノーバウンドシュートでは最初の1、2本を良い感じで蹴り込んでいたにもかかわらず、3本目はあらぬ方向へボールが飛んでしまい、もったいない結果となってしまいました。もっと先へ進めるだけのキック力を持っているだけに、1本1本、安定した質のキックを繰り出したかったところです。
また、昼前には、上級生のみで、11人制フットボールが、再び行われました。
さて、昼食の後は、いよいよキャンプ最後のメインイベント、“Mundialito”です。
まずは、グループリーグ首位で折り返したTAKUKI擁するウルグアイvsグループリーグ4位だったSHOKI擁するアルゼンチンの準決勝です。
TAKUKIはトップで、SHOKIは左サイドバックでプレーします。グループリーグの成績ではウルグアイが断然有利かと思いきや、試合は互角の展開で進みます。この決勝トーナメントで勝てば、今までの成績は関係ない。そう考えるアルゼンチンは、首位で折り返したウルグアイを食ってやろうと、モチベーション高くプレーしています。TAKUKIは、ボールを持った際の判断に依然、課題を残します。スペイン人の少年達は、皆がっつりとボールを奪う為に襲ってきます。体をぶつけて、時にはさりげなくユニフォームを掴んで、止めに来ます。ちょっとでも余計な動きをしようものなら、もうシュートチャンスやパスコースが塞がれてしまいます。襲ってくる敵、周囲で動いている味方の動きをそれぞれインプットしながら、瞬時に的確なプレーを選択し、実行に移さなければなりません。そこには、技術の前に、判断力が求められます。ドリブルに自信のあるTAKUKIは、まずは自分でドリブルという選択肢から入る癖がついている為、パスに対する判断が常に遅れます。相手ディフェンダー陣も、「こいつ、ドリブルしか狙ってないな。」と察知すると、いよいよがっつりとボールを奪いに来ます。相手のディフェンスを簡単にしてしまっている訳です。また、ちょっとでもコントロールを誤れば、素早く体をこじ入れられ、ボールを奪われてしまいます。このクラスの相手になると、ちょっとの判断ミス、技術的なミスも許されず、高い次元での精度が求められます。TAKUKIは、もがき苦しんでいます。それでも、持ち味の鋭いターンを使って、相手をいなし、時に、動いている味方にタイミングの良い、質の高いパスを繰り出し、必死に自分の持ち味を発揮しようと頑張ります。それでも、味方がお膳立てした絶好のチャンスを2度外してしまい、なかなか乗って行く事が出来ません。
一方、左サイドバックで無難なプレーを繰り出すSHOKI。しかし、プレーの幅が狭いと言う印象が変わりません。ミスが少ない代わりに、思い切ったチャレンジも少なく、ドリブルでサイドを縦に突破したり、ワンツーを使って抜け出す工夫も無く、この日、一本も攻撃に絡み、シュートはもちろん、センターリングを上げる事も出来ませんでした。来たボールを簡単にワンタッチで味方に預けて終わり。そんなシーンが続いたSHOKI。まだまだ底を見せていない感はあるものの、どれ程のポテンシャルを持っているのか、謎めいているSHOKI。このまま、無難なプレーばかりを続けていると、爪を隠したままでいると、能ある鷹もただの鳥と同じになってしまいます。ミスを恐れずに、積極果敢にプレーする事。もっと図々しくプレーする事。態々海を渡ってまで遥々やって来たSHOKIにとって、今必要なものは、そういうプレーです。
さて、試合はシーソーゲームの末、何とアルゼンチンが3-2で勝利、決勝へ駒を進める事に成功しました。
さて、もう一つの準決勝は、グループリーグ2位、ITSUKI擁するブラジルvs SHUNとKOSHIRO擁するグループリーグ3位のフランスの対決です。
ITSUKIは左サイドバック、一方、SHUNとKOSHIROはそれぞれ右と左のサイドバックに入ります。相変わらず、ポジションに関係なくガンガン攻め上がるKOSHIRO。一方、SHUNもセンターバックのマルクとすっかりと仲良くなり、マルクから、「チャンスだったらどんどん攻撃参加していいぞ!」と声を掛けられています。そして、フランスは、この両サイドバックが交互に攻撃参加し、前線のダニ、ミゲル、モンチ、フォデ等で形成する攻撃陣に加わります。特に、“ダニ・アウベス”状態のKOSHIROは、いつの間にか右のウイングの位置で幾度となくセンターリングやシュートを放ちます。また、全くパスをもらえる状態で無い時点から、ガンガン「ヘイ!ヘイ!」と大きな声でボールを呼び続ける為、不思議と、最後はそこにボールが辿り着いたりします。やはり、“声”は非常に重要です。もっとも、KOSHIROの課題はキック力。午前中のキックゲームの数々でも、なかなか目立てなかったように、特に、キック力を身に着ける事は、今後の彼の課題となるでしょう。しかし、これはすぐにどうこうなる問題でも無い為、じっくり取り組むしかありません。しかし、いくら細くても、華奢でも、質の高いキックを蹴る子はいます。“キックのセンス”と言うやつです。一方、KOSHIROの素晴らしいところは、常にganas(やる気、意気込み)を全力で発揮出来る事。試合で手を抜く彼を見たことがありません。負ける事が大大大嫌いな彼は、勝利を目指し、常に全力でプレーします。彼のそうした強いハートは、大きな武器(魅力)と言えるでしょう。
さて、SHUNもKOSHIROと呼応するように最終ラインから声を出し、チームを盛り立てます。今キャンプでも最上級生の部類に入るSHUN。周囲の大半が年下ながらも、才能豊かな少年達の中で、技術的には互角ながらも、フィジカルやスピードでは、やや抜き出た存在。チームメイトとの信頼関係を徐々に築いて来たようで、安定した好プレーを発揮し始めています。なかなかゴールに絡む仕事までは辿り着けないものの、完全にチームの主力級の存在感を示しています。今後は、もっと縦に迫力あるプレーを繰り出し、自分でシュートを狙って行きたいところです。
一方のITSUKI。良くも悪くもミスを恐れる彼は、一つ一つのプレーを堅実に丁寧にこなす事が出来ます。派手さは無いものの、その堅実な仕事ぶりは、評価出来ます。時折、「おっ!」と言うテクニックも見せるITSUKI。そう!彼は持っているのです。持っているのに、それを積極的に使わない。使おうとしない。実にもったいない感を抱かせる選手の一人です。自分のやれる範囲の中で、それをきっちりこなす事が出来るものの、敢えて、その先のチャレンジを殆どやらない。やっているプレー自体は悪く無いだけに、チーム的には何も言う事が無いのですが、今はまだ、天井(限界)を決める必要はありません。もっと積極果敢にプレーする、もっと声を出してボールを呼び込み、どんどんプレーに参加する。それが、今のITSUKIに欠けている点です。彼は出来る子なんです。でもやらない。もったいない。それは、彼のキャラクターから来る部分で、一朝一夕では解決しない問題なのかもしれません。が、彼がもし一皮剥ければ、もっと面白い選手になれるだけに、歯痒いところです。彼には、ミスを恐れない気持ち。チャレンジする事に喜びを感じる気持ちを持ってもらいたいものです。
さて、試合はフランスが2-1で勝利、決勝へ駒を進めました。
一方、ちびっ子大会では、RYUGEN擁するイタリアとRYUSEI擁するスペインが対決。共に両チームのFWを務め、チームの鍵を握ります。ドリブルが大好きなRYUSEIは、まずはボールを持ったら、自分で持ち込もうとトライします。しかし、スペイン人少年達の牙城をなかなか突破する事が出来ません。3度のトライでいずれも突破を阻まれると、味方から、「RYUSEI!パス!パス!」の声が。すると、今度はパスを意識してプレーするようになり、球離れが良くなってから、チームの攻撃が滑らかになって行きます。
一方のRYUGEN。彼の魅力は、突然、スイッチが入ると、巧みなフットワークから強烈なシュートを繰り出す事。そして、この試合でも、左サイドでボールを受けると、素早く中央へカットインして、右足を振り抜き、ゴール!見事な得点を決めます。
そのRYUGENの課題は、ポジショニングとボールを呼び込む声。ストライカーとして、常にゴールを奪えるパターンをいくつも持ち、シチュエーションによって、どのパターンを繰り出すかを念頭に入れながら、そのタイミングとポジショニングを探し出し、味方からボールを引き出す。そうした工夫が、今は殆ど見られません。また、ルーズボールの攻防に淡白さが見られ、何が何でもマイボールにすると言う気迫と闘志が足りません。スペイン人少年達の、“俺が!俺が!スピリット”をエッセンスを少しでも吸収して欲しいと思います。「スペイン人、上手いね!」と言っている場合ではありません。君も、やれば出来るんです!
さて、そうこうしている内に、RYUSEIがゴール前でボールを受けて抜け出すと、GKをするりとかわしてシュート!これが見事に決まり、RYUSEIも得点を上げます。
試合は、そんな2人の活躍に、勝利の女神は決着を付ける事が出来ず、2-2で引き分けました。
その後、RYUSEI擁するスペインはドイツに0-2で敗退。RYUGEN擁するイタリアもドイツに2-7で敗退し、ドイツに優勝を許してしまいました。しかし、この試合の2得点は、いずれもRYUGENによるものでした。
さぁ、そして上級生大会も、いよいよ決勝です。SHOKI擁するアルゼンチンvs SHUNとKOSHIRO擁するフランスの対決です。試合は互角の展開、シーソーゲームとなります。フランスはモンチ、ダニがゴールを決めれば、アルゼンチンはバルサのルイスが2ゴールを決め、どちらも一歩も譲りません。
すると、アルゼンチンは遠目からのミドルシュートを放つと、GK巨漢セバスが弱点の横を突かれ、まさかのゴールを許してしまいます。試合時間残り僅か、フランスの選手達に焦りが生じます。前掛かりに攻めるフランス。KOSHIROは、左のトップに配されます。すると、左サイドバックのSHUNが攻め上がって、縦のKOSHIROへ。すると、ペナルティーエリアの中を細かなドリブルで一人、二人とかわしたKOSHIROが右足を振り抜くと、ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーール!!!
後半ロスタイム、まさかの同点ゴールです!!!
喜ぶフランスチーム!KOSHIROも両手を上げ、喜びを爆発させます。
試合はそのまま3-3のドローで、何と決勝の決着はPK戦へ突入します。
決勝のPKと言えば、94年のアメリカW杯、ブラジルvsイタリアのロベルト・バッジオを思い出します。
同点ゴールの殊勲者、KOSHIROを1番手に、次々とPKを決めるフランスに対し、後攻のアルゼンチンはバルサのルイスのキックがまさかのゴールポスト直撃。
試合は、劇的な幕切れで、フランスの優勝に終わりました。
尚、3位決定戦は、こちらも3-3でPK戦の末、ブラジルを破ったウルグアイが銅メダルを獲得しました。
こうして、あっと言うだったエスパニョール・キャンプは、幕を閉じました。
少年達はこれから、22日から開幕するワールドカップ・スクール・トーナメントに向け、バルセロナへ戻り、しばしの休息、エネルギー充電、そして特訓を行う事になります。
また、その様子は、時折このブログでお伝えして行きたいと思います。
このキャンプで出会った仲間達、皆、ありがとう!!!
また会おう!
Hasta luego !!!
ウルグアイが優勝すると思っていたのに・・ショック。せっかくトップを任されていたのに十分な働きが出来ず残念でしたね。サッカーもスペイン語も、何度も繰り返し練習して、体に覚えこましていかなければいけませんね。あっという間のエスパニュールキャンプでしたが、毎日とても楽しそうで良かったです。
キャンプも残りあと半分です。たくさんの経験を積んで、大きくなって帰ってきてくれたらと思います。植松様、ありがとうどざいました。残り半分よろしくお願いいたします。
投稿情報: takuki mama | 2011/07/17 03:11
植松さんのおっしゃるとおりITSUKIはそんな子供なのです。年齢的にも臆病な性格を打破しなければいけない様に思いますが、幼少時から何事に対してもこんな感じなんで....。失敗する事が人一倍嫌いなのです。親としてITSUKIをどのように導けばいいのか悩みところです。何かいいアドバイスないでしょうかね?
次はバルセロナ、せめて声を出すことから始めてもらいたいです。
投稿情報: itsukity | 2011/07/17 23:52
植松さんの全員への詳細な課題提起は、参考になりますね。ただ、RYUSEIの課題としては突破力なのか、展開力なのか、はたまたボディーコンタクトなのか、或いはないのか・・・。まあ、ないことはないと思いますので、折を見て助言していただければ、大変参考になります。この後の大会では、その部分の変化が見られれば muy bien !!!です。
投稿情報: りゅうせい ちち | 2011/07/19 14:41