8月2日(土) 今日もバルセロナは雲一つ無い青空と強い日差し
さぁ、いよいよワールドカップ・アカデミーも最終日を迎えることとなりました。
9時15分、まずはTAIKI擁するワールド・チームA<インファンティル>が7、8位決定戦に臨みます。組合せの妙もありますが、リーグ戦を3位で終えた同チームがカップ戦では最下位を争うことになるとは、当初誰が予想したでしょうか。
昨日のワントップで今ひとつ持ち味を発揮出来なかったTAIKIは、この日は2-3-1の右サイドMFで先発です。対戦相手はリーグ戦には出場していなかったテクノB。結果的にリーグ戦とカップ戦で2冠を達成したテクノのBチームです。
試合はワールド・チームがボールポゼション高く試合を支配する展開。この日ワントップに入ったエドガー。これまで独特!?のプレースタイルで、難しいプレーを難なくこなす一方、簡単なプレーをミスする安定感の無さが目立ったエドガーですが、この日は数々のチャンスをしっかり決め、2得点の活躍。結局、終止優勢に試合を進めたワールド・チームが4-2で大会最後の試合を締めくくりました。TAIKIは得点こそなかったものの、右サイドで相変わらずの存在感を発揮し、攻守に貢献していました。
TAIKIにとっておよそ一ヶ月の武者修行。連日のトレーニングと試合、毎日30度を越す灼熱の太陽の下、終盤はややパフォーマンスが落ちた感はありますが、全体を通して、本当に良く頑張りました。自分の通用したプレー、しなかったプレー。自分の特徴、そして課題。様々な事を感じ取ったと思います。
TAIKI「日本では体を入れればもう大丈夫というプレーが、こっちではさらに体を入れ返され、ボールを奪われることがある。激しさ、圧力みたいなものが違う。それに、天然にしろ人口にしろ、芝でやっているこっちの選手はスライディングタックルが多く、結構それにもやられた」
これは彼が感じたこちらでの“日本とのギャップ”の一部。彼がここでひしひしと感じ、体感した様々な“世界の感触”は、きっと今後の彼に大きな影響を与えることでしょう。
TAIKIのワールド・チームA<インファンティル>の成績
リーグ戦 4勝4敗 3位 TAIKI:6ゴール
カップ戦 1勝2敗 7位 TAIKI:1ゴール
※大会期間中のワールド・チームAの登録名はプラン・マルセッ・ウノでしたが、便宜上、ワールド・チームAとしてご紹介させて頂きました。
さて、続いてはSOSOKEの出番です。
カップ戦、一昨日の第一回戦で見事ポルトガルFCを破ったワールド・チーム<アレビン>。しかし、今日の準決勝の相手はリーグ戦で優勝を収めたプラン・マルセッ2です。あの恐るべき10番がいるチームです。小柄ながら素晴らしい動きを見せるあの10番が気になり、本人に聞いてみた所、納得致しました。彼の名前はセルヒオ君10歳。なんと!彼はアトレチコ・マドリーの育成部門(年代別選抜)に所属しているのです。そして、奇しくも10歳で日本から海を渡り、アトレチコ・マドリーの難関入団テストを突破して同チームに所属するMIYAGAWA RUI君と同じチームと言うでは無いですか。「RUIは俺の友達だよ」と屈託の無い笑顔を向けてくれたセルヒオ。
さぁ、準決勝のスタートです。
実はワールド・チームはそれまで2-3-1のMFの両ウイングを務めていたジョルジョとダニが都合により、昨日で帰国。が、しかし、SOSUKEにはチャンスです。そして予想通り、SOSUKEは左サイドMFで遂に先発です。試合は序盤、互角の戦い。しかし、徐々にプラン・マルセッ2のパスワークがワールド・チームゴール前に襲い掛かります。ひやりとするシーンが何度か続く中、ワールド・チームがカウンターです。エースのルイス、そしてワントップに入ったエンゾーと繋ぎ、最後は右サイドのSOSUKEがフリーでシュート。しかしこの絶好機は、SOSUKEのシュートが僅かに枠を外れてノーゴール。このピンチでさらに火がついたプラン・マルセッ2は、ワントップのセルヒオが右サイドを突破してセンターリング。これを走りこんだ選手が押し込んでゴール。遂に均衡が破れます。その後も猛攻を仕掛けるプラン・マルセッ2、しかし、ワールド・チームもジェラールが、ボルジャが、そしてプジョールが(4番の選手で名前を忘れてしまいました。風貌、髪型はプジョールです)、懸命のディフェンスで奮闘します。
しかし、その包囲網を打ち破ったのが、やはりセルヒオでした。巧みなボールコントロールから相手ディフェンスをかわして得意の左足を振り抜くと、ボールはゴールネットに突き刺さりました。0-2。この後はセルヒオを中心としたプラン・マルセッ2のオンパレード。0-3、0-4、0-5と点差はどんどん離れて行きます。セルヒオは小さいながらも、状況判断、パスセンス、ドリブル、シュート、全てを高次元で兼ね備えています。まさに、恐るべしです。
SOSUKEも「俺の同年代の中であんなやつ見たこと無い」と脱帽の様子です。
そんなSOSUKEは、昨日の試合中にぶつけた左足の踵が今日になって痛み出し、やや足を引きずった中でのプレー。表情からも痛々しさが滲み出ています。それでも懸命に走るSOSUKE。そんな彼にゴールの女神が微笑みました。右サイドを突破したルイスがシュート性の早いクロスをゴール前に蹴り込むと、逆サイドから飛び込んだSOSUKEがボレーシュート。これが見事に決まり、1-5と1点を返すことに成功しました。
しかし反撃もここまで。最後はこの日4点目となるゴールをセルヒオが叩き込み、1-6でワールド・チームの完敗となりました。ちなみに、セルヒオ率いるプラン・マルセッ2がカップ戦も制し、2冠を達成しました。
その1時間後、今度はSOSUKE擁するワールド・チームの3位決定戦です。相手はテクノ。リーグでは最下位だった相手ですが、カップ戦ではここまで勝ち上がって来ました。
SOSUKEは1試合目の後、医務室で足を治療してもらいました。しかし、その後も“痛い”と訴えるSOSUKE。
「無理しない方が良い。痛いなら次の試合は休め」
SOSUKE「出来る。やりたい」
大会最後の試合という事もあり、彼の意志を組むことにしたトビアス監督。
「分った。でも、ピッチに出たら怪我の事は忘れ、全力で戦うんだ。相手に弱みを見せるな」
SOSUKEは怪我を考慮され、ベンチスタートです。
試合は序盤にルイスのゴールで幸先良くワールド・チームが先制。その後は膠着状態が続くも、再びルイスのゴールで2-0とリードします。が、ここでアクシデント。FWのエンゾーが接触プレーで足を痛めてしまいました。実は、数日前から足の親指を痛めていたエンゾー。プレー中はそんなことをおくびにも出さなかった彼ですが、痛い所をさらに打ちつけ、限界が来たようです。泣き崩れるエンゾー。ここでSOSUKEの投入です。
弱みを見せるなと言われたSOSUKE。一試合目のようにびっこを引く様子も無く、懸命に歯を食いしばってプレーしています。そしてSOSUKEにはもう一つ約束がありました。それは、“簡単に倒れない”です。しかし昨日したこの約束も、足の痛みの中では余計厳しいものとなってしまいました。
痛みの為、チーム戦術である前からのプレッシャーにあまり貢献出来ないものの、それでも相手を追い駆けようと必死です。そんな中、見方のパスがバウンドして裏に抜け、ディフェンダーとの追いかけっこになりました。懸命に走るSOSUKE。痛い左足で懸命に踏ん張り、強引にシュートに持って行きます。しかし追いついて来たディフェンダーが体を寄せながらシュートブロックへ。ボールはSOSUKEの2、3歩前に転がりましたが、荒々しいタックルを受けたSOSUKEは前につんのめりそうになりました。今までならここで「あぁ~」と言って倒れ、審判からファールを引き出そうとしたSOSUKE。が、しかし、ここでは痛い足と共に踏ん張り、もつれながらも体勢を立て直して弾んでいるボールに飛び込んでループシュート。相手ディフェンスのスライディングをかいくぐり、前に出ていたGKも完全に裏を突かれた形。
しかし、惜しくもシュートはクロスバーの上を僅かに超えて行きました。でも、一連のプレーは、明らかに今までのSOSUKEとは違う、ガッツ溢れるプレー、周囲を感動させるプレーでした。「いいぞSOSUKE!」「惜しいぞ、次だ次!」監督やチームメート、そして駆けつけていた父兄から声援が送られました。
その後は一進一退の攻防。終盤には左に抜けて来たボールをSOSUKEが走り込みながら痛めた左足でシュート。しかし、ボールは力なく、GKがキャッチ。
そして、試合終了。2-0。チームは見事3位の座を勝ち取りました。SOSUKEは得点こそ無かったものの、ファイト溢れるプレーが好印象を与えました。
これからゴールデンエージに突入するSOSUKE。年上のプレーやJリーグ、そしてヨーロッパフットボールのプレーをどんどん見て、アイデアを吸収し、イメージを膨らませて、それを自分のものにして行って欲しいですね。
SOSUKE「日本では簡単に2、3人とドリブルで抜けるんだけど、今回はなかなか抜けなかった。パスも緩いと全部取られちゃうし、色んな部分でスピードが全然違った。あ、そや、判断の速さとかも」
日本ではチームの主力としてプレーしているSOSUKEにとって、自分の思い通りになかなかプレーさせてもらえない周囲のレベルの中で、戸惑いや苛立ちを感じ、今まで感じたことの無いような“壁”を感じたかもしれません。しかし、まだ10歳。大好きなフットボールにはまだまだ上があると言うことをその若さで知ることが出来たのは幸せなことです。それを今後に活かせるかどうか、SOSUKE!それは君次第だ。
SOSUKEのワールド・チーム<アレビン>の成績
リーグ戦 5勝3敗 2位 SOSUKE:7ゴール
カップ戦 2勝1敗 3位 SOSUKE:1ゴール
さて、これで大会は全日程が終了です。昼食後は閉会式、デモストレーション、メダルとフットボール通知表の授与などが行われ、盛大なセレモニーと共に幕を閉じました。
最後は皆と握手をして、お別れです。
大会を通じて、言葉の壁を乗り越え、色んな国の少年たちと触れ合い、そして楽しそうに接していた2人。こうして築いた新しい友達との交流も、きっと彼らの中で大切な思い出となっていくことでしょう。そして、言葉の重要性を感じ取ったはずです。
さて、TAIKIと共にワールド・チームAを支えたハビのお父さんが皆をバルセロナ市内の宿まで車で送ってくれました。その後、夕食を取り、2人は爆睡の世界へ突入して行きました。
明日は7時に宿を出発。果たして、起きれるでしょうか!?
by 植松 慶太
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