月曜日は、2度目のカンテラ(BenjaminB/2001年生チーム)に挑戦です。前回は惨敗と言って良い結果に終わったTSUBASA。カタルーニャ州中から集まっている、より選れた2001年生まれの集団です。それが、サッカー後進国である日本から来た少年が、勝とうと言う方が、本来、虫が良過ぎる話なのかもしれません。
問題は、自分がまだまだ全然上手く無い事が分かった。勘違いしていた事が分かった。そこから、どう進んで行くかでしょう。
8歳にして初めてと言っていい、サッカーでの挫折を味わったTSUBASA。本来、負けず嫌いの彼が、その圧倒的な凄さを目の当たりにした時、闘争本能が防衛本能に負け、自己防衛に走ってしまう。「あいつら速い」「俺、下手だし」そんな弱気な発言を、同じ歳相手に発したのは、TSUBASAにとって初めての事だったかもしれません。
この日の練習でも、序盤のグラウンドを広く使っての7vs7のフォーメーションを意識したゲームでは、全くと言っていい程、ボールに触れませんでした。ボールを呼ばない。ボールを呼べる位置にポジションを取らない。時折、味方がくれたパスは、相手が寄せて来ると、奪われるのを恐れ、直ぐに近くの味方に渡してしまう。夏には全く見た事の無いTSUBASA。皮肉にも、自信を失い、恐怖心を覚え、翼のもげた彼の姿が、そこにはありました。
お父さんからメッセージ、“全力で戦えないのなら、やらせない方が良い”が本気で頭の中を過ぎりました。まるでコーンのような状態でピッチに佇む少年を、日々真剣に、明日のプロを目指してトレーニングを積んでいるエスパニョールのカンテラの選手達の中に、これ以上置いておくのは難しいでしょう。
折りしも、この日はシトシトと冷たい雨が降りしきるどんよりとした空模様。雨に濡れ、髪から伝って落ちる滴は、まるで彼の目から零れる涙のようにも見えました。
給水タイムの時、彼と話をしました。
“TSUBASA、今の練習で何も出来なかったのは、分かっているな。周りは皆上手い。速いし、強い。君はこの中で一番下手かもしれない。それはしょうがない。ここはスペインのエスパニョールのカンテラだから。フットボールの強いスペインの中でも、上手いやつらが揃っている集団だ。でも、君はもっと上手くなる為にここに来たんだろ!?一番下手でもいいじゃないか!ここから、もっともっと頑張って、上手くなろうぜ!這い上がろうぜ!お父さんとの約束、忘れたのかい!?抜かれたら、死んでも止めるんだろ!?夏に来た時は、バンバン止めてたじゃん!こいつらは上手いし、速いし、強いから、そう上手くは行かないかもしれないけど、全力でぶつかれば、止められるかもしれないじゃん!?今、君は全力を出しているかい!?逃げないで、闘っているかい!?下手くそなら、せめて、こいつらよりも沢山走って、こいつらよりも全力で闘おうぜ! もしそれが出来ないなら、日本に帰れ!”
そんなこの日の最後のトレーニングは、4チームに分かれ、3人もしくは4人のミニゲームでした。
ゲーム形式になると、途端に剥き出しの闘争心を出して闘いだすスペインの少年達。降りしきる雨が、更に高揚感を高ぶります。周囲で激しいバトルが繰り広げられる中、それに感化されるように、TSUBASAが激しさを取り戻します。何かが彼の中で、プツリと弾けたようです。1対1のせめぎ合いで、体を入れ、ボールを奪い取るTSUBASA。体格では小さい方のTSUBASAが、それまでの動きが嘘のように、互角の攻防を繰り広げ始めます。なかなか攻めの際に、自分のドリブルが通用しないものの、奪われたら奪い返す。直ぐに戻って、スライディングで相手のシュートを防ぐ。お互い、もみくちゃになり、転ぶ。まさに、夏に見た、あのTSUBASAでした。しかも、それをエスパニョールのカンテラの中でやっているのです。そこにはもう、30分前のTSUBASAの姿はありませんでした。今までは、10回の1対1で1回勝てるかどうかだったのが、今、目の前のTSUBASAは、4回、5回と止めているでしょうか!?
彼の中で、何かが吹っ切れたようです。雨の中、無我夢中の泥んこサッカーで感じた無心にボールを追いかけたあの感触。彼もまた、そんな無の境地に入り込んだのでしょうか!?
この日、彼は、最後の最後で、確かな感触、手応え、充実感を掴み取ったようです。
TSUBASA「次のカンテラの練習が楽しみ。早く次の練習にならないかな。」
どうやら、ようやく彼の挑戦が始まったようです。
by Keita Uematsu
楽しんだ昨夏とは、対象的なスペインになりました。でもこのような経験は、これからの長い人生において、サッカーだけではなく人間として成長できる貴重な経験となるはずです。学校では学ぶことのできないものを、スポーツは教えてくれ人間を成長させてくれます。
植松さんの言葉が、TSUBASAの心の奥まで響いたのではないかと思います。ありがとうございます。
投稿情報: TSUBASA PAPA | 2010/04/15 00:28
楽しんだ昨夏とは、対象的なスペインになりました。でもこのような経験は、これからの長い人生において、サッカーだけではなく人間として成長できる貴重な経験となるはずです。学校では学ぶことのできないものを、スポーツは教えてくれ人間を成長させてくれます。
植松さんの言葉が、TSUBASAの心の奥まで響いたのではないかと思います。ありがとうございます。
投稿情報: TSUBASA PAPA | 2010/04/15 00:29
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投稿情報: koshiroppapa | 2010/04/15 06:43
>植松様
>
>はじめまして、おはようございます。
>私は日本でツバサの通うサッカースクールでコーチをしている鈴木と申します。お手数お掛けしますが、ツバサに伝えて頂きたい事があり、ご連絡をさせて頂きました。
>『ツバサ、いつでも、どこでも、誰とプレーしてても自分のベストを尽くしなさい。
>
>ツバサは日々の明光サッカースクールでの練習で「テクニック」・「スピード」・「パワー」で楽にプレーさせてもらえているか?
>「テクニック」に翻弄されても「スピード」について行けなくても「パワー」に圧倒されても「気持ち」で負けててないツバサだからコーチも上級生のみんなもツバサを認め、そして共に競い合い楽しめているんだ。
>
>せっかくスペインに行かせてもらっているんだ。
>今までやってきた事を思い出してスペインの子ども達に挑戦してこい。
>
>お父さん、お母さん、植松さんをはじめスペインでツバサのお世話をしてくれている人達への感謝の気持ちを忘れずに闘ってこい。
>
>成長して日本に帰って来るツバサを楽しみに待っています。』
>
>植松様、お手数ですがツバサに分かるようにお伝え下さい。
どうぞ、よろしくお願いします>
>明光サッカースクール 鈴木
投稿情報: 鈴木良隆 | 2010/04/16 08:40