この日は二束の草鞋、もう一つのトライアウトチーム、Sant Andreuの選手として、ワンデーミニ大会に出場しました。昨日よりも規模が大きく、12チームによる戦いが行われます。何と、この大会には、昨日まで共に戦ったEspanyolも参戦しています。
グループリーグの初戦、最初の相手は地元Castellar D。YUTAは1-3-2-1の右ハーフで先発出場を果たします。まだ、このチームには1度しか参加していないものの、その才能を素早く見抜いたイヴァン監督がいきなりの大抜擢です。
このチームは、来シーズンBenjaminの1年生として、Sant Andreuのカンテラ(下部組織)の最初の学年として発足するチーム。今シーズンは、それぞれスクール生として、Sant Andreuの別々のチームでプレーしていました。そして、このタイミングで、スクールの中からよりよい選手が選出され、来シーズンのBenjamin C(2005年生まれの1軍)として、チーム編成しようというわけです。その為、まだ出来立てほやほやのチームは、まだ2回しか一緒に練習をしておらず、チームとして、初めての試合と言う事にもなります。
試合は、いきなりSant Andreuの8番アレハンドロが先制ゴールを叩き込みます!すると、間髪入れずにゴール前の混戦からこぼれ球に反応したYUTAが蹴り込み、ゴール!!!Sant Andreuでの初試合、緊張の中臨んだYUTAにとっては、嬉しいゴールとなります!
これで一気に気持ちが乗ったか、中盤でどんどん存在感を示して行きます!
試合は4-0でSant Andreuが快勝を収めました!
続いてのグループリーグ2試合目。この試合に勝てば、グループリーグ1位が決定し、準決勝に駒を進める事が出来ます。しかし、相手は強豪Sabadell(サバデル)。トップチームはリーガエスパニョーラの2部リーグに属するプロクラブで、先ほど、オーナーが日本企業になったことでも有名なクラブ。今日のニュースでは、同クラブと提携を結んだFC東京から田邉草民(そうたん)選手が今夏から半年の期限付き移籍で入団するという情報も流れていましたね。
実質、グループの雌雄を決する戦いとなりました。YUTAはベンチスタートとなったこの試合、試合は一進一退の攻防が続きます。力関係が互角になった時には、球際の攻防が激しくなります。そんな中、Sant AndreuはSabadellに何度か決定機を掴まれるも、ここで存在感を見せたのがキャプテンのGKアルナウ。実は彼、バルサからもお誘いを受けている程の将来有望なGK。まだ小学生の低学年で、通いの距離、地元愛、敬愛するイヴァン監督の存在等もあり、今はその誘いを断っているとか。とんでも無い頼もしい守護神がいたものです!
そんなアルナウのファインセーブもあり、0-0の緊迫した展開が続く中、遂にYUTAが投入されます。先ほどの相手とは数段違う実力チーム、特にフィジカルの強さに戸惑いながらも、徐々に得意の小回りの利いたドリブル、球さばき、パスワークを見せ始めたYUTA。すると、Sabadell陣内でボールを受けると、するりと右にディフェンスをかわしてそのままドリブルでゴールへ突進。右足から繰り出されたシュートは、逆サイドの隅に決まり、YUTAが値千金の均衡を破るゴールをぶち込みます!!!
試合は、Sabadellの必死の猛反撃を抑え込んだSant Andreuが勝利!見事、1-0で勝ち、準決勝に駒を進める事に成功しました!!!
さぁ、2時間の休憩時間を経て、セミファイナル!対戦相手は、再び地元のCastellar C。初戦のDに比べ、粘り強く戦ってくるチームに、Sant Andreuはなかなかゴールをこじ開ける事が出来ません。20分一本勝負で行われているこの大会、時間は刻一刻と過ぎて行きます。そんな中、この試合の均衡を破ったのは守護神のアルナウ。相手陣内、25mとやや離れた位置からのフリーキックを任された彼は、元パラグアイ代表の守護神チラベルト顔負けのパワーシュートで相手GKの手を突き破り、ゴールネットを揺らします!
そして、追加点を上げたのは、我らがYUTA!相手陣内でボールを受けると、バイタルエリアをするするとドリブルで抜け出し、ミドルシュート!これが、ゴール右隅に見事に決まり、Sant Andreuが追加点を上げる事に成功します。
この日のYUTAは、持ち味のしっかりと繋ぐパスの技術に加え、相手のボールをプレスバックして奪い取るディフェンスでも際立ったプレーを披露します。小柄ながら、腰の低いチャージで、球際も負けません。そして、良いポジションに味方がいなければ自分でドリブルで仕掛け、味方が良いところに走り込んでいれば、そこを逃さず使う。そうしたプレー判断もいい。ようやく、輝かしいYUTAが戻って来た感があります!
18番の左サイドバックのアレハンドロのジョルディー・アルバ顔負けのオーバーラップからのゴールにより、リードを広げたSant Andreuが、3-0で勝利!見事、決勝進出を果たしました!
さぁ、いよいよ、決勝です。対戦相手はもちろん、Espanyolです!!!
“昨日の友は、今日の敵!”
相手にとって不足無し!いざ、対決です!
気合とモチベーション十分で臨むSant Andreu。YUTAも、Espanyol入団の望みを捨てておらず、「ゴールを決める!」と意気込みます。
試合は、Espanyolが押し気味にゲームを進めます。特に、センターフォワードに入る12番のパウのスピード溢れるプレーは秀逸です。スピード、パワー、技術、プレー判断。どれを取っても、一つ、二つ上のEspanyol。試合は、Espanyolが押し込む形で先制点を決めると、今度は超攻撃的左サイドバックのデニスがオーバーラップからYUTAのディフェンスをかわし、ゴールを叩き込みます。あっという間の2失点。やはり、Espanyolです。
その後、Sant Andreuも懸命に反撃。YUTAがEspanyol陣内で持ち込んでもらったファールを、再び守護神のアルナウが豪快に蹴り込み、1点を奪い返します。
しかし、その後もEspanyolがゲームを支配。YUTAは、中盤で懸命にボールを受けるも、一人かわしても直ぐにカバーに入ったディフェンダーに奪われ。パスをしようにも、そのパスコースを読まれ。ドリブルでかわしたはずが、粘り強くディフェンスされて、最終的には引っ掛かってしまう。相手の凄さに圧倒され、やや気持ち消極的なプレーになっている様子も伺えます。しかし、それはSant Andreuの他の選手にも言える事。ここから、勇気を振り絞って果敢にチャレンジして欲しいところです。
が、勝ち目が見い出せず、時間の経過と共に意気消沈していくSant Andreuの息の根を止めるかのように、Espanyolは圧力を増して行きます。
そして、更に2点を加えたEspanyolが1-4で勝利、Sant Andreuは悔しくも、準優勝となりました。
試合後、がっくりとうなだれるYUTAを優しく迎えるEspanyolの選手達。
試合が終われば、再び“アミーゴ”に戻ります。
この日の大会で、十分にやれるところを見せてくれたYUTA。自分の持ち味を十分に出してくれたYUTA。と同時に、一線級と対戦した際に、あまりやらせてもらえなかった壁も突き付けられました。
ここから、更にパワーアップし、Espanyolの選手に追いつき、追い越すための挑戦。ようやく、YUTAの挑戦が始まったような気がします。